琉球漆器の加飾技法は、多種多様で「堆錦」がその代表格ですが、今回は、その他の主な琉球漆器の加飾技法である「沈金」「箔絵」「密陀絵」について説明します。
器物に沈金刀などの独特の刀を使って器表面に細い線で彫模様を描いていき、そこに漆を摺りこみ、油紙などで模様以外の部分の漆を拭き取り、最後に金箔、純金粉、顔料などを押し込んで鋭く繊細な文様に仕上げていくという技法です。
沈金はもともと中国の鎗金(そうきん)という宋代から清代に盛行した技法から生まれたものです。デザイン的には自由奔放で重厚かつ華麗な作品が多く、朱漆のほかに黒漆、緑漆に沈金を施したものもみられます。
琉球に伝来する最古の沈金器として緑漆鳳凰沈金丸櫃(りょくしつほうおうちんきんまるびつ)があげられます。この琉球最古の沈金器例の制作年代は1500年頃と推測され、円筒形の印籠蓋造の丸櫃で、表面は緑漆塗り、内部は朱漆塗り、沈金で器表全体に点斜格子の地文様を施し、鳳凰、雲などが各所に配された豪華絢爛な作品です。
漆で文様を描いたあとに半乾燥させ、金箔・銀箔を押し当てて、余分な箔を拭い去り、さらに乾燥させ、黒漆で線を描いていく技法で、装飾性の高い作品に多く用いられます。箔絵は儀式用品に優れた作品が多くみられるとされています。
密陀絵は、乾性の桐油や荏油でといて、顔料を練り込み、これを使って文様を描く技法です。密陀僧を乾燥剤として混ぜる事から密陀絵と呼ばれます。色漆では表現しにくい白色や淡い中間色の文様を描くために、編み出されたと考えられており、色の鮮やかさを強調するときに用いられます。 国の重要文化財に指定されている御供飯(徳川美術館所蔵)は、密陀絵の代表作とされています。
その他の琉球漆器の加飾方法には、蒔絵、螺鈿、漆絵、平文、蒟醤(きんま)、切金、存清など多種多様で、それぞれの技法を複合的に使用した作品例も数多く存在しています。
琉球螺鈿については、こちらにて説明しております。