沖縄特有の歴史的背景をもつ琉球漆器には、多種多様な技法や製品があり、それが特徴ともなっています。
琉球漆器の特徴としては、「琉球朱」という特有の美しい朱色があげられます。 琉球(沖縄)で漆工芸が発展した理由としては、亜熱帯に属する高温多湿という環境と、強烈な南国の太陽の光という、自然条件によるところが大きくあります。
沖縄のこうした気候は、湿度や温度を人為的に調整する必要がなく、自然乾燥するので、漆が乾くのには理想的な環境なのです。
そして、強い紫外線により漆が透明になりやすく、そのため琉球漆器特有の鮮明な美しい朱色となって仕上がります。
因みに、琉球王朝時代では、漆器の下地に漆が使われていましたが、明治時代に入ると、豚血下地が使われるようになります。 豚血下地は沖縄独自の漆器の下地法で、豚の血に桐油や泥岩などを混ぜ合せた下地材です。漆の下地より安価ですが、近年は化学塗料も使われるようになり、現在は行われていません。
また、木地に用いられたデイゴが育ちやすい自然環境であることも、漆工芸隆盛の大きな要因のひとつです。デイゴは、極寒の地であっても、砂漠であっても、熱帯雨林地帯であっても、あらゆる自然環境でも表面積が変わらず、膨張・収縮せず割れる心配がないという特性をもっています。さらに、デイゴは軽量で、厚手の作品に仕上げることも出来、デザインにも自由度が大きいという利点があります。
その他の琉球漆器の木地には、シタマキというエゴノキがあり、椀などの小物をつくる際に用いられます。他には、ガジュマル、センダン、ヤラブなどが使われ、最近では、サトウキビの絞りカスを利用したバカスも素材として使われ始めているそうです。
中国大陸、東南アジアに囲まれた琉球は、時代を通じて周辺諸国の文化的影響を受けてきましたが、漆工芸技術においても、中国などへ人を派遣し、螺鈿、沈金、箔絵、密陀絵などの技法を学びました。
琉球では、政治と信仰との結びつきが強く、祭祀や儀式などで用いられる勾の首飾り玉や、王家の宴会などで使われる美御前御揃と呼ばれる食籠と足付盆や酒器のセットなどが、漆の加飾技法を駆使して、装飾されました。
また、1373年以降、約500年の間、中国の皇帝に貢物をささげる朝貢を行っていた琉球王府ですが、琉球製の黒漆に螺鈿の加飾が施された盆や椀、漆塗鞘の刀剣などが多く贈られていたと伝わっています。
琉球漆器の加飾技法には、沈金や螺鈿、蒔絵、箔絵、密陀絵などよく使われますが、呂色塗、春慶塗なども用いられます。
最も琉球漆器の特徴を示す加飾方法としては、比嘉乗昌が起案した独自の堆錦で、琉球漆器の漆工の加飾では80%を占めるており、今日の琉球漆器の代表的な技法となっています。