窯変とは、陶磁器の装飾技法のひとつで、焼成によって器ものの一部あるいは、全体に現れる色の変化のことをいいます。
焼成中に、焔(ほのお)の性質や釉の具合などによって、器に予期しない釉色や釉相を呈する窯変は、窯による景色の変化の現れです。
釉薬を掛けずに焼成するやきものである「無釉陶」の多くは「焼締(やきしめ)」という、高温で堅く焼き締めただけの技法でつくられていますが、高温で長時間、焼かれることから、焔の状態によって、様々な窯変を起こし、それがやきものの味わいとなって現れます。
どのように変化するかは、土と釉に含まれる鉱物や燃料の性質、焔の状態によって決まりますが、同じ土で同じ形につくった器ものを、一つの窯で同時に焼成しても、位置や置き方によって変化の現れ方は異なります。
偶然に生まれる色の変化の複雑さが、かつての茶人達の鑑賞の対象となり、次第に作為的に変化をコントロールして装飾技法とするようになりました。
人為的に変化を求めて行うようになった窯変ですが、それでも、作り手の思いもよらない変化が起こることが多く、それが窯変という技法の魅力となっています。
焼成中に器にふりかかって溶けた薪の灰が自然釉となって表面に流れたもののことをいいます。灰の成分のアルカリが素地と化学反応して、ガラス質となり、意図的に釉薬を掛けたわけではないのに、自然に釉が掛かり流れ、景色となったものを自然釉と呼んでいます。
点を散らしたような状態になったものを「胡麻」、青緑色に発色したものを「ビードロ釉」といいます。
自然釉のやきもの…伊賀焼、信楽焼、備前焼、越前焼、古丹波
皿や手鉢に小形の器ものや陶土を重ねて、焼成することによって、灰がかからない重なり部分に、円形の火色が生じたものです。
当初は、窯入れをする際に、なるべく多く積み重ねようとして、皿の上に、徳利などをのせて焼いたら、その部分が、焼けむらとなってしまったという、偶然に生じた景色でしたが、その偶然にできた焼けむらの部分が、あたかも牡丹餅のような形になったことから、この名がつき、備前焼などの装飾技法となりました。
牡丹餅のやきもの…備前焼、信楽焼
窯詰めの際に、器もの同士が熔着しないように、藁を巻いて焼成することによって、赤褐色の筋が生じたものです。
藁のアルカリ成分と木地の鉄分とが化学反応を起こし、赤褐色となります。うす茶色の素地に、赤、茶、朱色などの線が襷のようにかかった模様を呈しています。
火襷のやきもの…備前焼
黒色から灰青色などの色の変化が模様になっているのが桟切です。窯の隅や器物の陰など、直接に焔や灰があたらない、煙に包み込まれるような場所に現れる模様で、炎があたる部分は赤褐色、灰で覆われた部分は黒く、境目は灰青色になるのが一般的といわれています。窯の各部屋を仕切る桟の近くでよくみられたため、この名がつきました。
桟切のやきもの…備前焼