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金工の伝統技法

2015/12/3

金工の伝統技法


金工とは、金属を素材として、それに技巧を施した工芸もしくはその職人を意味します。金工という言葉は、中国・殷代の官名に由来する言葉で、天子の六工(土工、金工、石工、木工、獣工、草工)のひとつです。


金工は美術工芸の中でも幅広い分野を持っており、日本では、弥生時代に銅鐸・銅剣・銅鉾・銅鏡、古墳時代には鉄や金で、透彫りや線彫り、象嵌、鍍金(ときん)などの金工技法がみられ、装身具や貨幣などがつくられています。

日本での金工は、仏教伝来以来、急速に発展し、仏像や仏具などからつくられ、さらに中世になって茶の湯の釜や調度品などに施され、現代までその技術が受け継がれてきました。



金工とは〜金工の起源


人類が火を使うようになったのは、今から約20万年も前のことといわれていますが、火によって鉱石を熱すると金属が分離し、それが冷えると固まるという「冶金」の技術がいつ始まったのかは、はっきりとわかっていません。


紀元前6000〜5000年頃、冶金の技術がペルシャに発祥したといわれ、その頃のオリエントやエジプトに銅器の文化が存在したことが知られています。

紀元前2000年頃にはヨーロッパで青銅文化が興り、中国でも紀元前1600年頃、アメリカ大陸でも紀元前1000年に青銅器や金銀器を持つインカ帝国の文明が栄えました。

このように人類が最初に使用した金属は銅や、金、銀などであったと考えられます。


その後、人類は銅と錫を合金して青銅をつくるようになり、そして、鉄が用いられるようになったのは、銅よりも後といわれており、中国では周の時代には、生活用具を鉄でつくりはじめていたとされています。



金工の伝統技法


こうした金属を人類はどのように加工したのでしょうか? 古い時代の金工の技術が用いられたものとしては、誰もが知るエジプトのツタンカーメンの黄金のマスクがあげられます。

エジプトのツタンカーメンのマスクは、木を彫ってマスクの型をつくり、これに金属の板を覆せて、槌で打ち出す「押出し」という「鍛金」技法によってつくられているそうです。


鍛金という金工技法より少し後に、金属を溶かして型に固める「鋳金」が出現したといわれ、この鍛金、鋳金の技術の発達により、彫るという「彫金」やその他の金工技法が育っていったと考えられています。


金工の主な技法〜鋳金

金・銀・銅・鉄・錫・アンチモニーなどの金属やその合金を加熱して溶解させ、これを土や砂、石など不燃性の物質でつくった型に流し入れてつくる技法のことで、鋳造ともいいます。

鋳金によってつくられる仏具、仏像、花瓶などの置物類などの作品は、鋳物といいます。


金工の主な技法〜鍛金

金、銀、銅、鉄などの金属や合金の塑性を利用し、打ち延ばしたり、縮めたりして、壷、皿、花瓶などの作品をつくる方法のことを鍛金または打ちものといいます。

鍛金には、鉄床に金属の塊を置いて、金槌や木槌で打ち延ばして薄い板金をつくる「鍛造」と金属の板を表と裏から打って、立体をつくる「鎚起」、金属版を折り曲げたり、ロウ付けして立体をつくる「板金」といった方法があります。

その他、鍛金には、鉄を鍛錬して日本刀などの刃物をつくる技術は「鍛冶」と呼ばれ、美術工芸分野では鍛金とは区別して使われています。


金工の主な技法〜彫金

鏨と呼ばれる硬い鉄でできた彫刻等のようなものを使用して、様々な金属に文字や文様を彫刻し、切削造形する方法を彫金といいます。ジュエリーに良く使われる技法です。

彫金には、文様を高く彫り上げる「高肉彫り」、文様を線で表す「毛彫り」、絵画のように筆意を表現する「片切り彫り」、小さな粒をおきあげ彫りにする「魚々子」、金属の色や光沢を利用して金属の片面に他の金属を嵌め込む「象嵌」など、様々な技法があります。

「象嵌」には、糸象嵌、針金象嵌、線象嵌、布目象嵌、平象嵌などがあります。


金工の主な技術〜その他

錺り(かざり)…金属の線を用いて鎖を編んだり、ロウを使って金属を付け合せたりする技術で、この技術者は錺り工、白金師、寄せもの師とかつて呼ばれていました。

滅金(めっき)…銅や銅合金に金銀の 鍍飾をするもので、鍍金(ときん)ともいいます。一般には水銀に純金を溶かして、これを銅の表面に塗って鍍飾しますが、簡易な鍍金の方法では、銅や真鍮の板を火で加熱しながら、水銀を引いて金箔を置く方法もありますが、滅金は水銀により健康を害してしまうので屋内で行われました。


このように様々な金工伝統技法がありますが、日本では、平安時代にはすでに甲冑や刀剣の装飾に金工技法を用いられたといわれています。


江戸時代になると刀剣の鍔、縁頭といった拵えなどで、各藩のお抱え金工師や町彫り金工師が活躍しました。

明治維新後の廃刀令が発令されると、刀や甲冑の金工需要はほとんどなくなり、花器、香炉、喫煙具、建築装飾など、日常品にも金工の技術が使われるようになりました。

また、女性の着物の帯留めや、根付などにも、金工技術は遺憾なく発揮され、和様の美の伝統は、伝統工芸として現代に継承されています。

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